絵馬ブログ

絵馬、絵馬堂についてのブログ。ほぼ月一回更新。/筆者:佐藤拓実/訪れた絵馬スポットの数:54(番外編:6)/ツイッター @EMA_blog_

住吉大社の絵馬殿

住吉大社 本殿)

 

 全国に約2300社あるといわれる住吉神社の総本社で、延喜式名神大社摂津国一之宮である住吉大社に行ってきた。初詣には毎年約230万人の参詣者があるという。大阪近辺では最も有名で由緒ある神社の一つだろう。鎮座は神功皇后摂政十一(西暦211)年。

 

 

 

住吉大社の概要

 

 祭神は四柱。伊邪那岐命 (いざなぎのみこと) が伊邪那美命 (いざなみのみこと) を黄泉の国から連れ戻せずケガレを受けた。そのケガレを清めるために海に入って禊祓いしたとき生まれた、底筒男命 (そこつつのおのみこと) 、中筒男命 (なかつつのおのみこと) 、表筒男命 (うわつつのおのみこと) 、以上の三柱を住吉大神という。また、第十四代仲哀天皇の后である神功皇后 (じんぐうこうごう) が住吉大神の加護を得て新羅遠征(三韓遠征)から帰還し、凱旋の途中で神託によって現在の住吉の地に鎮斎されたことから、住吉大社には神功皇后も併せ祀られ、四柱を住吉四社大明神と称している。

 代表的なご神徳としては、伊邪那岐命の禊祓いから「祓の神」とされ、また住吉大神が海中から出現したことから、仁徳天皇による住吉津の開港以来、遣隋使や遣唐使に代表される「航海の守護神」とされ、さらに社地が白砂青松の風光明媚なところにあり万葉集古今和歌集などに数多く歌が詠まれているところから「和歌・文学の神」、そのほか住吉大神が草を敷かずに苗代をつくる方法を教えたという伝説から「農耕の神」や「産業の神」とされており、現在でも崇敬をあつめている。ちなみに船絵馬にもしばしば住吉大社の風景が描きこまれている。

 住吉大社で特徴的なのは建築様式で、住吉大神神功皇后を祀る四つの本殿、四本宮は、第一、第二、第三本宮が縦直列、第三、第四本宮が横並列という独特の配列になっており、住吉大社のウェブサイトでは「あたかも大海原をゆく船団」と喩えられている。国宝に指定されている四本宮すべてが「住吉造」と称される神社建築史上最古といわれる様式で建てられており、住吉造の平面構造は大嘗祭で造営される「大嘗宮」という神殿と類似した構造らしい。現存の本殿は文化七(1810)年に造営されたものだ。伊勢神宮で有名な式年遷宮住吉大社でも行われており、記録に残っているなかでは天平勝宝元(749)年から20年ごとに社殿が作り替えられてきた。

 

住吉大社が描かれた船絵馬・象潟戸隠神社

 

(参考)住吉大社 ウェブサイト https://www.sumiyoshitaisha.net/

 

 

 

住吉大社境内の様子

 

 南海電鉄住吉大社駅で下車。駅前からすでに灯籠が立ち並んでいる。

 

 

 境内に入って左手には遣隋使の碑が。右手には俵屋宗達の屏風絵の石碑。

 

 

 さすが狛犬も大きくて立派だ。

 



 灯籠の数がとにかくすごい。境内には約600基あるという。

 

 

 反橋を渡る。きつい傾斜がついているので登り降りしやすいように段が設けられている。渡るだけでお祓いになるらしい。渡る手前の左右に絵馬殿がある(後述)。

 

 

 反橋を渡ると左手に手水舎がある。ウサギがモチーフになっていてかわいい。住吉大社の鎮座が辛卯年卯月卯日(卯=兎)であることから、兎が神使とされているそうだ。

 

 

 第四本宮前には住吉神兎(すみよしうさぎ、別名なでうさぎ)がある。天神社によくある「なで牛」のウサギバージョンだ。兎の体を撫でて無病息災を祈願する。

 

 

右側:第四本宮、息長足姫命(神功皇后)をお祀りする。左側:第三本宮、表筒男命をお祀りする。

 

 

 

第二本宮、中筒男命をお祀りする。

 

 

 第一本宮、底筒男命をお祀りする。

 

 

 楠珺社(なんくんしゃ)。奇数月は左手を、偶数月には右手を挙げた招福猫を毎月集め、48体そろうと満願成就の証として納め、さらに大きな猫と交換する。このほかにも多くの摂社、末社が境内にある。

 

 

 

住吉大社の北絵馬殿

 

 

 反橋の左右に絵馬殿があり、それぞれ北絵馬殿、南絵馬殿と呼ばれている。文化庁データベースでは、昭和四(1929)年の建築で木造平屋建、建築面積46㎡、桁行三間梁間一間、東西棟の切妻造本瓦葺、吹放ち形式、太い大面取角柱や切石敷風にしたモルタル土間などが復古的な意匠でまとめられている、と説明されている。

 まず北絵馬殿から見ていく。

 

(参考)

文化庁 国指定文化財等データベース 登録有形文化財(建造物) 住吉大社南絵馬殿 https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012404

文化庁 国指定文化財等データベース 登録有形文化財(建造物) 住吉大社北絵馬殿 https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012405

 

 

 立派な瓦が載っている。

 

 

 参道に面して掛かっている奉納額から見ていく。

 

 

 奉納額の裏面が見える。

 

 

 「かっぽれ生誕二百年記念」の奉納額。「奉納」「紀文大尽宝入船」「平成十一年十一月十一日」「限りある命ゆえ 命之限り踊り 人生をさ最高の 芸術品に かっぽれ家元四世?桜川千代助?」

 

 
「奉納」「住吉大社御宝前」「宿坊大峰山竹林院」「平成六年四月吉日」「大坂住吉御崎講 開講四百年記念」「市戎大國社初辰楠珺社 紫燈大護摩供奉仕 貮拾五周年記念」。

 

 

 北絵馬殿の内側の絵馬を見ていく。

 

 

 「奉納」「大正十二年六月吉日」「岩脇久五郎氏」「大坂 南久太三 西岡製」「職長引退紀念」

 

 

 神輿と灯篭が描かれた奉納額。「奉納」「住吉大社神輿奉仕会」「奉納十周年記念」「昭和六十三年七月吉日」

 「すみ乃江の 岸の松原 遠つ神 わが大君の いでましところ」

 

 

狂言などの奉納記念の額か。「奉納番組」「昭和三十年十月吉日 大阪 同聲会」

 

 

巻物や木刀が付いた奉納額。「元祖磯又右衛門柳関齊源正足 天神眞揚流柔派 元日本体育會大阪支會名誉教員 田中半兵衛柳連齊源正之(花押?)」「明治四拾三年四月」「作人 難波作太郎 彫刻師 増田竹次郎」「春香髙橋恒書」 

 

 

雅楽の「還城楽」の絵馬か。「天保七歳丙申霜月」右上の「保大」は絵師の名か。

 

 

 「奉獻」「海軍記念日 建之」「昭和十年五月廿七日」「報國丸マスト略歴」。日露戦争の旅順口閉塞作戦で使用された船についての奉納額。

 

 

 船にのる武将?のような絵馬。

 

 

 「櫻川ぴん助風流かっぽれ道場創立25周年記念」「紀文大尽宝入船」「平成五年七月吉日」「沖のくらいのに 白帆が見ゆる あれは紀の國 みかん舟」

 

 

 

 背景には住吉大社の境内が描かれている。神馬奉納の場面か?

 


 「昭和辛未六歳 浪華住畫師 三世坂田萬助 納 號 耕雪」能の岩船を描いた絵馬か。坂田耕雪は明治〜昭和期の挿絵画家。

 参考:コトバンク 坂田耕雪https://kotobank.jp/word/%E5%9D%82%E7%94%B0%20%E8%80%95%E9%9B%AA-1645629


 
 
 

住吉大社の南絵馬殿

 

 

  参道に面して掛かっている奉納額から見ていく。

 

 

 「住吉祭 大坂住吉神輿會」「第四十九回式年遷宮 御鎮座千八百年記念大祭」「平成二十三年五月吉日」「聖町 安立連合神輿会」「東粉浜神輿会」

 

 

 「神輿船奉納記念」「平成元年12月23日」「(株)浜野造船所建造」

 

 

 

 内部の絵馬を見ていく。

  

 

 「鰐」「山本憲史 画」

 

 

 「第百回記念奉納素謡會」「松葉會」「昭和十年四月十四日 於住吉神社楽殿

 

 

 「住吉大社御結鎮祭大的奉射名」「大阪府弓道連盟」「昭和三十七年一月十三日」

 

 

 武将が描かれた大きな絵馬。右側に烏帽子を被った馬上武者、左下に長刀を持った武者が描かれている。「願主御額看板師 大阪三休橋筋ばくらう町 大阪三休橋筋安堂寺町」「備前屋善右衛門 備前屋新兵衛」「弘化五戊申歳正月吉日」「發起 備前屋善兵衛 執次 山上宮門太夫

 

 

 金属製の絵馬。

 

 

 「奉祝御鎮座千八百年記念大祭」「住吉大社御結鎮祭大的式 奉射名」「大阪府弓道連盟」「平成二十三年一月十三日」

 

 

 「昭和六十二年七月二十六日」「元乗組員一同」「軍艦加古」「排水量八、七〇〇トン 輝く武勲を残したるも ソロモン海々戦において ついに海底に深く眠る」「時 昭和一七、八、一〇、〇七一五」。背面に「軍艦加古会」。

 

 

 「日本廻国一之宮巡拝 満願成就」「納札巴連」「創立二百周年記念」

 

 

 「明治三十年四月上浣」「江守氏」兎の絵馬。

 

 
「奉納 住吉詣」「平成元年八月二六日 長野滔声会竹元直次他三八名」

 

 

 

・まとめ

 日本有数の由緒正しい神社の絵馬殿としては掲げてある絵馬の数こそ少ないかもしれないが、住吉大社らしい図柄も見られ、新しい絵馬と古い絵馬が混在している様からは現在まで続く信仰を感じることができた。

 
 

 

住吉大社・・・大阪府大阪市住吉区住吉2丁目 9-89