絵馬ブログ

絵馬、絵馬堂についてのブログ。ほぼ月一回更新。/筆者:佐藤拓実/訪れた絵馬スポットの数:54(番外編:6)/ツイッター @EMA_blog_

岩木山求聞寺の絵馬堂②

岩木山求聞寺の絵馬堂)

 

 青森県弘前市求聞寺絵馬堂についての記事、第二回目。求聞寺までの道のりや概要などは前回の記事を参照してほしい。

 

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・求聞寺絵馬堂の絵馬②

 

 

 向かって左側の壁の絵馬を左上から順に見ていく。

 

 

 女性の拝み絵馬。虚空蔵菩薩

 

 

 男女三名の拝み絵馬。虚空蔵菩薩が右側に描かれている。

 

 

 虚空蔵菩薩の絵馬。「青森縣中津軽郡駒越村大字鳥井(野?)大正六年旧九月四日 大髙正夫敬白」「昭和四年九月二日 成田喜司 敬白」。

 

 

  銭で作られた鳥居の額。「昭和十年七月九?日」「中郡藤代村大字?土堂 山本専五郎 敬白」

 

 

 男性の拝み絵馬。

 

 

 女性の拝み絵馬。山を背景に岩木山神社の神を描いたものだろう。

 

 

 銭で作られた鳥居かと思いきや板に描かれているようだ。「昭和八年旧五月十三日」「南郡畑岡村字林崎 成田サダ 五十二歳」。

 右には虚空蔵菩薩の絵馬。「昭和貮拾七年旧一月十三日」。

 

 

 女性の拝み絵馬。一瞬猫耳かと思ったがリボンのようだ。「昭和二年六月十三日 弘前市土手町 藤田千代 十三才」。

 

 

 虚空蔵菩薩の拝み絵馬。「昭和七年舊六月二日」「髙谷かや」。

 

 

 宝物に囲まれた恵比寿大黒。

 

 

 縦長の寅の絵馬。「鼻和 鳴海夛作 敬白」

 

 

 なかなか迫力のある武将の絵馬。「明治四拾四年旧◯月一日」「黒〇成田氏」

 

 

 虚空蔵菩薩の男の拝み絵馬。 

 

 

 女性の拝み絵馬。

 

 

 白馬の絵馬。「明治三十七?年」「願主 相馬村三上津〇五?郎」

 

 

 「聖觀世音 大正二年八月朔日」。元は境内の観音堂に奉納された絵馬かも。

 

 

 牛の絵馬。 

 


 福禄寿と亀の絵馬。

 

 

 牛の絵馬。

 

 

 宝物と大黒天の絵馬。「居土村 山中三太郎 敬白」。


 

 

 比較的新しい龍虎の絵馬。「常盤村々長當選記念 高木爲貞 昭和四十四年二月九日」。常盤村は現在の藤崎町北部。

 

 

 「昭和四十八年初夏」「祝会員還暦祈願子孫安泰」「弘前市城西大正十四年会有志」「弘前ネプタ繪 水滸傳 花和尚勇戦の圖 達温」。

 「花和尚」は水滸伝の登場人物である魯智深のあだ名。「達温」は弘前ねぷたの絵師として活動し「ねぷた和尚」の愛称で親しまれた長谷川達温(1921~1989)のこと。

 

 

 馬や牛、鳥の小さな絵馬もたくさん奉納されている。

 

 

 白い猿の絵馬。

 

  

 素朴な龍の絵馬。

  

 

 

 ここからは正面の壁の左側半分の奉納物を見ていく。

 

 

 立派な寅の絵。

 

 

 太陽の方を向き拝んでいるような高砂の絵馬。「藤苗村 小嶋サド」「大正五年旧三月廿日」。右下の落款は「仙波?筆」と読める。

 

 

 寅と丑の絵馬。まさに求聞寺にふさわしい。「仙波筆」。 

 

 

 千両箱を背負ったおめでたい丑の絵馬。「大正四年 弐?月?吉?〇」「弘前〇〇」「〇〇末吉」。

 

 

 寅の絵馬。「明治四十五年九月廿四日 品川町 近藤」。

 


 右側の絵画は狩野芳崖筆の《紙本著色不動明王図》の複製だろう。

 

 

 ここからは扉上の壁の絵馬を向かって左から見ていく。

 

 

 虚空蔵菩薩?の拝み絵馬。「大正十五年舊八月一日 和徳村字堅田 願主柿崎ナオ年三十六?才」。

 

 

 太陽を拝む老夫婦の拝み絵馬。

 

 

 恵比寿大黒の絵馬。

 

 

 高砂と亀の絵馬。

 

 

 左側の絵馬は丑の背に乗る子供が描かれている。十牛図の第六図「騎牛帰家」か。右側は虎と男性が描かれている。虎と共に描かれる仙人には鄭思遠がいる。

 

 

 

 虚空蔵菩薩を囲む人々の絵馬。

 

 

 鯛を釣る恵比寿の絵馬。

 

 

 丑の絵馬。「昭和五?年六月十一日 中津軽郡西目屋村大秋 澤田周一才?」



 

 

 

・まとめ

 本尊の虚空蔵菩薩の絵馬や丑寅生まれの一代様」であることから丑や寅の絵馬が多かった。馬の絵馬や恵比寿、大黒、高砂、桜井の別れなど定番の図柄も見られた。奉納時期は明治〜昭和にかけてのものがほとんどのようだ。これほどたくさんの小絵馬を見られる場所は全国的にも少ないだろう。すぐ近くの高照神社と共に津軽の絵馬文化を感じさせる場所だった。

 

 

 

岩木山求聞寺・・・青森県弘前市百沢寺沢29

 

岩木山求聞寺の絵馬堂①

岩木山求聞寺の絵馬堂)

 

 青森県最高峰であり津軽地方の人々に崇敬されてきた岩木山。その麓にあり岩木山神社別当寺の流れを汲むのが求聞寺だ。

 

・求聞寺の概要

 

 求聞寺は真言宗智山派の寺院で山号岩木山。明治四(1871)年に廃寺となった岩木山百沢寺の流れを汲む。古くから「百沢の虚空蔵様」と親しまれ、「津軽一代様」と呼ばれるこの地方の干支の守本尊「丑寅生まれの一代様」として知られ、津軽三十三霊場の第三番札所でもある。

 境内に設置された看板によれば草創は寛永二(1625)年、津軽藩二代藩主信牧公が津軽家と領民の安泰、子孫長久、国土豊饒を祈願し求聞持法の荒行を行い、念願成就した寛永六年に虚空蔵求聞持法から寺号を取り、建立したことによる。本尊の虚空蔵菩薩も信牧の寄進によるものであったが明治九(1876)年旧暦8月の火災で焼失し、現在のものは明治十二年、斉藤法善和尚が焼け跡に小さな庵を結んだ時のものであるそうだ。明治二十六(1893)年本堂が再建され、さらに昭和三十二年(1957年)に改装され現在に至る。明治三十九(1906)年には寺内から堂建立の際用いたと思われる銅製の宝瓶が発見されている。

 

 

 

・求聞寺までの道のりと境内の様子

 

 

 弘南バス百沢行きに乗り、岩木山神社前で下車すると看板や虚空蔵菩薩の石碑が建っている。蔵助川沿いに遊歩道を進むと求聞寺に通ずる橋がある。

 

 

 示現堂は、1975(昭和五十)年8月6日にこの地域で発生した土石流の被害者を慰霊する施設だ。左側の坂を上っていく。

 

 

 虚空蔵菩薩の石仏か。

 

 

 この階段を上ると求聞寺の堂宇がある。

 

 

 階段の両脇にはたくさんの石仏が。

 

 

 木に一円玉がたくさん載せられていた。

 

 

 求聞寺本堂。両脇には丑と寅。  

 

 

 求聞寺観音堂

 

 

 観音堂のすぐ隣に同じくらいの大きさで建っているのが絵馬堂だ。

 

 

 

・求聞寺の絵馬堂

 

 

 外壁には立派な寅の織物が。 

 

 

 本堂改修と境内整備の際の寄付者名。

 


 

 絵馬堂の壁は天井を残し上からしたまでほぼ絵馬で覆われていて圧倒される。中央には黄色っぽい大きな神馬像が置かれ、左右には小さい神馬像、背後には巡礼者のマネキンがある。

 

 

  

・求聞寺絵馬堂の絵馬

 

 

 向かって右側の壁の絵馬を右上から左下へ順に見ていく。

 

 

 比較的写実的に描かれた絵馬。「大正参年旧六月十三日 岩木村大字百澤 高木金七 敬白」

 

 

  「明治二十九年旧九月朔日 千年村大字一野渡 齊藤たネ? 敬白」

 

 

 寅の絵馬。板ではなく紙に描かれているように見える。

 

 

 

 二頭の丑の色紙が入れられた額。

 

 

 丑の絵馬がたくさんある。微妙に細部が違っている。

 

 

 三毛猫の絵馬。しばしば養蚕が盛んな地域で、繭を食い荒らす鼠を駆除することから猫が描かれた絵馬が奉納される例があるが、ここでもそのような意図があったのかは不明。

 

 

 白馬の絵馬。

 

 

 「大正二年九月 工藤菊次郎 敬白」数は白馬ほどおおくないが黒馬の絵馬も何点か見られた。

 

 

 素朴なタッチの、油絵らしき牛と鳥の絵馬。

 

 

 丑の絵馬。「昭和七年旧八月十三(日)」「中津軽郡駒越村字鳥井野村」「玉田惣作 敬白」

 

 

 恵比寿大黒の絵馬。「明治四拾五年旧六月十三日」「丹藤長吉 敬白」。

 

 

 黒馬の絵馬。「昭和五年」「北?郡板柳町実町 竹浪三次郎 四十八才」

 

 

 「大正弐年 旧六?月朔日」「中津軽郡〇〇〇 鳴海その 敬白」

 

 

 動きのある繋馬の絵馬。「葛西善作」。

 

 

 宝物と大黒天。「大正六年八月二十九日」「棟方ソメ」「中津軽郡堀越村」

 

 

 拝み絵馬。「昭和九年旧三月一日」「中郡和徳?村大字撫牛子? 工藤文三 敬白」

 


 御幣を背負った神馬の絵馬。

 

 

 白馬の絵馬。

 

 

 奉納者自身が描いたであろう丑の絵馬。

 

 

 桜井の別れの絵馬。

 

 

 恵比寿大黒の絵馬。「赤石みや」

 

 

 男女の拝み絵馬。山の間から現れた日輪を拝んでいる。

 

 

 白馬の絵馬。

 

 

 寅の絵馬。

 

 

 寅の刺繍が何点か奉納されていた。

 

 

 

 

 

 龍虎の絵馬。新しそうだ。

 

 

 虚空蔵菩薩の絵馬と、馬の字がびっしり描かれた絵馬(!)。

 

 
 「寅之会 為交通安全」「昭和六十一年三月吉日」「高橋相晃?画」

 

 
 虚空蔵菩薩を囲む念仏講の絵馬、白馬の絵馬、丑の絵馬「昭和二年旧十月二十一日」、寺院を拝む拝み絵馬。
 


 数が多いので二回に分けて絵馬を見ていくことにする。次の記事へ続く。

 

 

 

・おまけ

 

 

 求聞寺は岩木山神社の境内地のすぐ横にある。

 

 

 立派な楼門。 

 

 

 天才バカボンに登場する「夜のイヌ」のような逆立ちした狛犬がいる。

 

 

 

岩木山求聞寺・・・青森県弘前市百沢寺沢29