絵馬ブログ

絵馬、絵馬堂についてのブログ。ほぼ月一回更新。/筆者:佐藤拓実/訪れた絵馬スポットの数:54(番外編:6)/ツイッター @EMA_blog_

浄福寺護法堂の絵馬

浄福寺護法堂)

 

 

 

浄福寺護法堂の概要

 

 西陣エリア南西、住宅街の中にある浄土宗の寺院・恵照山浄福寺は初め天台宗に属し、延暦年間(西暦782~802)に賢憬(和銅七~延暦十二、西暦714~793)によって開創されたと伝えられている。たびたび火災にあい建治二(1276)年には後宇多天皇の命によって一条村雲に再建された。大永五(1525)年には後柏原天皇より念仏三昧堂の勅号を賜り浄土宗を兼ね、のち知恩院に属した。現在地に移転したのは元和元(1615)年のことで現堂宇は享保十八(1733)年の再建だという。寺宝に鎌倉時代の二十五菩薩来迎図(重要文化財)二幅、土佐光信筆の十王像(重要文化財)十幅などがある。境内の墓地には皇女や公卿、殿上人の墓が多い。

 護法堂は境内の東側、浄福寺通りに面する朱塗りの山門を入ってすぐ右にある。この山門は赤門とも呼ばれ、ここから浄福寺を赤門寺とも呼んでいるらしい。護法堂の脇には「上京区区民誇りの木」に指定されている高さ9メートル、周囲約4メートルのクロガネモチがある。天明八(1788)年の俗にいう天明の大火では、鞍馬山の天狗がクロガネモチの上(赤門の上とする話もある)に降り立ち巨大なうちわで火を消したといわれており、護法堂に祀られるのはその天狗(護法大権現)である。今も鞍馬山の遥拝所が護法堂の隣にある。

 今回はこの護法堂の絵馬を見に行った。

 

 

 

参考

浄土宗 浄福寺 京都市上京区 赤門と天狗伝説

https://johukuji.com/%e8%b5%a4%e9%96%80%e3%81%a8%e5%a4%a9%e7%8b%97%e4%bc%9d%e8%aa%ac/

京都市公式 京都観光Navi 浄福寺

https://ja.kyoto.travel/tourism/single02.php?category_id=9&tourism_id=75

日テレ 京都 心の都へ

https://www.ntv.co.jp/kyoto/backnumber/

京都市上京区 上京区の史蹟百選,区民誇りの木/浄福寺,クロガネモチ・ケヤキ

https://www.city.kyoto.lg.jp/kamigyo/page/0000012705.html

 

 

 

 

 境内の看板。

 

 

 立派な本堂。赤門から入り護法堂を過ぎてまっすぐ進むと建っている。

 

 

 

浄福寺護法堂の外観と絵馬

 

 

 護法堂。「赤門」を入ってすぐ右横にある。

 

 

 瓦には天狗の羽団扇や「護法」「護」の字が。

 

 

 護法堂の参道側の外壁に何点か奉納物がある。

 

 

 相撲の番付。「明治三十六年九月 大相撲半矢會」

 

 

 ほぼ図像が消えてしまった奉納額。

 

 

 天狗の羽団扇の絵馬。「寅年男」。

 

 

 銭でつくった羽団扇の奉納額。「大正拾参年貮月四日」「丑年女」「玉木きく」

 

 

 これも羽団扇の絵馬。

 

 

 護法堂のすぐ傍に生えている「上京区区民誇りの木」指定のクロガネモチ。

 

 

 クロガネモチのすぐ横の屋根の下に絵馬が並んでいる。

 

 

 菊の絵馬。「安政年舎丁巳霜月上澣」「願主 木村正之助敬白」

 

 

 しめ縄がまかれたクロガネモチを拝む親子か。「明治廿六年十二月」「御禮 午ノ年男 丑ノ年女 酉ノ年女」。

 

 

 金が貼られていたらしき絵馬。「明治廿一年二月」「施主 林姓」。

 

 

 お堂、クロガネモチ、天狗が描かれた絵馬。「明治三十二年五月吉日」「願主 乾 申之年女」

 

 

 右側に大きな天狗、左側に従者らしいたくさんのカラス天狗が描かれた絵馬。少し彩色が残っている。「安政三丙辰歳日」「上村氏」

 

 

 

 

・護法堂横の絵馬

 

 ここからは護法堂に隣接する建物にある絵馬を見ていく。

 

 

 扇を持った若武者の絵馬。「明治廿七年七月」「願主 高橋伊助?」

 

 

 迫力のある天狗の絵馬。「文久二壬戌」「樋口氏敬白」

 


 雲に乗る天狗と拝む人。拝む人の横に籠?が置いてある。「明治十四年二月吉日」「願主 杉田友吉」

 

 羽団扇の絵馬。「大正三年四月」「願主 中村勢以」。

 

 

 女の拝み絵馬。お堂、二本の木、天狗が描かれている。「明治四十三年九月」「小寺覺次郎」

 

 

 図像が破れ落ちている。

 

 

 羽団扇の絵馬。「明治二十年十月」「井上」

 

 

 拝み絵馬。天狗は描かれていない。「明治三十三年正月吉日」「小嶋菊女十七年」

 

 

 羽団扇の絵馬。

 

 

 願掛けの絵馬。「心」「希成就」「明治三十年八月吉日」「一澤彦太郎」。

 

 

 男の拝み絵馬。「明治・・・」「廿九歳男 奥村丑松」。女の拝み絵馬「御礼」「四拾四歳女」。

 

 

 よくみると鳥居の下に男が描かれている。お堂の後ろに木が。「明(治)四拾五年壱月吉(日)」

 

 

 しめ縄をまかれた木と女性の拝み絵馬。「御礼」

 

 

 クロガネモチらしき木と男の拝み絵馬。男の前には描かれている天狗の羽団扇は賽銭箱の模様か。「明治二十六年四月吉日」「小川岩?治郎」 

 

 

 狛犬と羽団扇の絵馬。「酉年廿八才」「中畔小治郎」

 


 心に鍵、花札、サイコロが描かれた絵馬。いわゆる断ち物絵馬で、賭け事断ちを祈願するものだろう。

 

 天井にまで絵馬が掲げられている。

 

 

 酒断ちを誓う奉納額。「酒 一代休」「四拾四年四月」「願主四十歳男」。

 

 

 髷の男の拝み絵馬。祠から光がさしている。上に羽団扇がある。

 

 

 親子の拝み絵馬。「明治二十四年八月吉日」「中村姓」

 

 

 浄福寺護法堂では珍しい、馬の絵馬。「明治廿九年六月」

 

 

 女三人拝み絵馬。「山本春」

 

 

 断ち物絵馬。「明治四拾四年拾弐月吉日」「勝負事一切」「辰之年男一代」

 

 

 女性の拝み絵馬。雲に乗った羽団扇とクロガネモチが描かれている。

 

 

 男の拝み絵馬。木と雲に乗った天狗が描かれている。「明治廿六年一月吉日」

 

  

「明治廿九申年十二月廿一日」「」

 

 

 男女の拝み絵馬。「明治廿二年十二月」「鳥居音吉」

 

 

 親子?の拝み絵馬。雲に乗った天狗がお堂から出てきている。

 

 

 サイコロが描かれた心に錠の絵馬。「明治四十四年五月二日」「三十五歳丑年男」

 


 サイコロ、花札が描かれた心に錠の絵馬。「明治三拾三年十一月」「廿八歳男」

 

 

 炎とサイコロと花札の絵馬。

 

 

 

・おまけ 釘抜地蔵(石像寺)

 

 

 浄福寺から10分ほど歩くと釘抜地蔵という名で知られる石像寺に行くことが出来る。浄土宗の寺院で正式には「明遍照院石像寺」という。釘と釘抜きが貼り付けられた絵馬を奉納する習わしで有名だ。

 

 

 地蔵堂

 

 

 釘とともに描かれた病床の人物の拝み絵馬。

 


釘抜と釘の絵馬がびっしり奉納されている。


 

 拝み絵馬や釘、釘抜の絵馬が奉納されている。

 

 

 女と二人の坊主の押絵。

 

 

 

 
・まとめ

 いわゆる観光寺院ではない浄福寺の境内は京都の人々の生活が感じられた。護法堂はクロガネモチや天狗のような特徴的な崇拝対象をもっており、奉納物も他ではなかなか見られない図柄のものが多かった。拝み絵馬や羽団扇の絵馬のほか何枚か断ち物絵馬がみられるのも貴重だろう。

 

 

 

 〇浄福寺・・・京都府京都市上京区浄福寺通一条上ル笹屋町2丁目601