絵馬ブログ

絵馬、絵馬堂についてのブログ。ほぼ月一回更新。/筆者:佐藤拓実/訪れた絵馬スポットの数:54(番外編:6)/ツイッター @EMA_blog_

法雲山東漸禅寺の馬頭観世音祭禮の絵馬屋

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 埼玉県熊谷市石原の東漸寺(とうぜんじ)は正式には臨済宗妙心寺派法雲山東漸禅寺という。境内にある馬頭観音堂では毎年1月第3日曜日に祭禮が行われており、絵馬屋さんが出店していると耳にして行ってみることに。

 東漸寺へは遠方からだと秩父鉄道秩父本線の石原駅から15~20分歩くか、国際十王交通の熊谷駅~籠原駅のバスに乗り国道17号沿い(昔の中山道)の熊谷警察署前で下車して10分くらい歩いて行くことができる。

 東漸寺へ歩いていくと住宅街の通りの向こうから煙が立ち昇り、何かが燃える匂いとともに読経する声がこちらへ流れてきた。ちょうど馬頭観音堂の前で地域の方々が集まってどんど焼き左義長)をやり始めたようだった。お堂の前には立派な鞍が置かれていた。どういういわれがあるのだろう?「南無観世音菩薩」の幟も立っている。正月飾りや底が割られた達磨やが次々火の中へ投げ入れられ、特に松の飾りはよく燃えていた。

 馬頭観音堂は門の右手にあり、馬頭観音堂の裏手は境内地を利用した幼稚園が、門を入って左手、本堂の手前には墓域への入り口がある。住宅街の中に位置する東漸寺は門前の通りがまっすぐ国道140号に通じており、境内にはお地蔵さんや庚申塔馬頭観音の碑などがいくつも設置されていた。初めて訪れたが「古くからこの地域で親しまれてきたお寺さん」という風情が感じられた。

 

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(境内の様子)

 

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 馬頭観音堂のすぐ横ではだるま(高崎だるま)が売られており、その奥で絵馬が売られていた。どんど焼きを見るにおそらくだるまと絵馬のセットが毎年恒例になっているのだろう。

 

 

 

・絵馬屋

 

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 絵馬屋さんはご夫婦で折り畳みの事務テーブルに絵馬を並べて売っていた。絵馬屋のおじさんによれば、もともと門前の参道では草競馬も行われ近隣の農民による素朴な絵馬屋も出ていたが一度途絶えた。それを絵馬屋のおじさんが父と二人で東漸寺の庫裡の天井画を描いたのがきっかけに、先代の住職から声をかけられて1975(昭和50)年ころに復活させ、以来45年間絵馬屋をやっているという。

 色鮮やかな絵馬は、秋田杉の上に日本画の画材(膠や顔料、胡粉などだろう)で絵を描いている。印章が入っているものもあって立派だ。サイズは二種類あってすべて手描き。大きい方は1辺が30㎝くらいの正方形で上辺と左右の辺に縁がつけられている。裏返すと小さい釘で縁が付けられているのがわかる。接着剤が併用されているかはわからない。小さいほうは長辺30㎝左右の辺が20数㎝くらいの五角形になっていて縁はない。絵柄は馬と干支の丑を描いたものがあった。よく見ると馬や丑の姿態や色はどれも微妙に違っていてこだわりが感じられた。今では絵馬を描く人も少なくなっているため、声をかけられて東松山市の上岡観音絵馬市の絵馬も近年では描いているそうだ。東漸寺は絵柄が決まっていないため自由にできるとおっしゃっていた。上岡観音絵馬市は昨年行って絵馬を何枚か入手したので私が持っている絵馬にも東漸寺の絵馬屋さんの手によるものが含まれているかもしれない。

 

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 絵馬を買うと、その場で祈願内容など文字を入れてくれる。昨年から疫病が流行り、いまだ収束の見込みはない。今年はやはり私のように無病息災や家内安全を願う人が多いのだろうか。私も大きい絵馬を1枚買って日付と無病息災の文字などをいれてもらった。近所にお住まいと思しき方が次々と訪れ絵馬を買っていて、文字入れを待つ絵馬がいつの間にかテーブルに積まれていた。この絵馬は本来は馬頭観音堂に奉納するはずのものだが材質も絵も立派だからだろう、私は持ち帰ってきてしまったし、私以外の参拝者の方々も持ち帰っているようだった。

 地域の方々に親しまれて絵馬屋さんが長く続いている様をお邪魔して見ることができ、新年から故郷に帰ったようなとても暖かい気持ちになった。

 

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 (終)

 

 

 

臨済宗妙心寺派法雲山東漸禅寺(東漸寺)・・・埼玉県熊谷市石原334