山形県米沢市の笹野にある笹野観音堂は、正式には真言宗豊山派長命山幸徳院笹野寺といい置賜三十三箇所霊場第十九番札所である。
バス停から降りてまっすぐ10分ほど歩くとこの仁王門に突き当たる。
大きな下駄や草履が奉納されている。
門を潜って振り返ると算額がかかっていた。彩色が綺麗なので復元されたものかもしれない。
観音堂は装飾がすごい(こちらに写真をたくさん載せた→山形日記⑤ 笹野一刀彫と笹野観音 - こたつ島ブログ)。
観音堂のすぐ脇にここ笹野の民芸品である「お鷹ポッポ」の銅像があった。
観音堂の内側に絵馬が5枚かかっている。明治のものも含むが比較的状態がいい。
置賜の観音講絵馬について調べた文献によれば、観音講絵馬には主に二種類あり、ひとつは講中で観音札所を巡礼し、無事に終えたときに納めた「巡礼絵馬」と、毎月十七日の千手観音の縁日に集まって観音様の掛け軸に拝礼し、御詠歌をあげたりした後で料理を食べ、酒盛りをして過ごす様子を描いた「直会絵馬」などがあるという。
置賜のような直会絵馬は最上の観音霊場ではあまり見られないものらしい。特別な巡礼ではなく、普段の観音信仰の現れといっていいかもしれない。
参考 渡邊敏和 「置賜の観音講を描いた絵馬についてー直会図を主としてー」 置賜の民俗第二十三号(置賜民俗学会)31p 2016年
女性ばかりの巡礼絵馬だ。左上に「奉納御寶前 昭和八酉 極月十七日」とある。西暦でいうと1933年だ。極月とは12月のこと。17日は千手観音菩薩の縁日。さりげなく鳥居が立っていることに注目したい。
右に「明◯◯?拾七年 旧参月一日」とある。状態はよくないが賑やかな宴の雰囲気が伝わってくる直会絵馬だ。
にぎやかな巡礼絵馬だ。レンブラントの夜警のような集団肖像画を思い出した。顔の描き分けはされているようには見えないが・・・。左下に「明治三十年六月吉日」とある。
画材がいいのだろうか。明治初期の割に鮮やかな絵馬である。左に「明治九丙子年五月」とある。楽しげな「直会絵馬」だ。左に掛け軸があり、拝んでいる人も。まだ男性もみな髷だ。
「明治二十九年」とはっきり読める。羽織を着た旦那さんが従者に絵馬を持たせて奉納しに来た場面だ。山高帽に羽織というのが当時の晴れ着や正装だったのだろう。
◯笹野観音堂(真言宗豊山派長命山幸徳院笹野寺) ・・・山形県米沢市笹野本町5686-5