(上岡観音)
目次
・上岡観音の概要
・交通手段
・馬頭観音堂の様子
・小さな絵馬掛けと幔幕
・絵馬市
・そのほかの境内施設
・参拝の様子
・まとめ
・(追記)2021年の様子
・上岡観音の概要
埼玉県東松山市にある慈雲山妙安寺境内の馬頭観世音は「武州上岡観音」として古くから牛馬と関わる農家から信仰され、関東随一の馬頭観音の霊場と言われている。毎年2月19日の縁日には全国的にも珍しい絵馬市が立っている。絵馬を描く者と売る者とで構成された「絵馬講」は売り上げの減少により昭和63年を最後に活動を停止し平成3年に解散したが、現在では保存会が活動を続けている。平成10年12月1日には国の選択無形民俗文化財に指定された。
(参考 東松山市 東松山上岡観音の絵馬市の習俗:http://www.city.higashimatsuyama.lg.jp/soshiki/kyoikubu/bunkazai/menu/shitei_bunkazai/1466557570232.html)
私は今まで2019年~2021年の3回、絵馬市を訪れた。写真も交えてその様子を以下で紹介していこう(ほとんど2019年の写真だが一部2020年の写真もあります)。2021年の様子は記事の最後に別項目で追記しています。
・交通手段
(駅前のバスターミナル)
最寄り駅は東武東上線の東松山駅。ここからバスで20~30分ほどで最寄のバス停「上岡」に着く。
・馬頭観音堂の様子
(2020年、絵馬市が始まる直前の様子)
(これは2019年の様子)
石の門柱の左右には大きな幟が立ち、参道にはたくさん赤い幟が並んでいる。2020年は絵馬市が始まる少し前に着いたのでまだあまり人がいなかったが、あとから続々と参拝者や観光客が訪れた。まずは馬頭観音を拝む。
馬、馬、馬。屋根に、柱に、梁に、いたるところに馬がいる。
・小さな絵馬掛けと幔幕
馬頭観音の向かって左手に小さい絵馬掛けもあった。ここにかかっている絵馬は絵馬市で売られているものとは違う。普段授与されているものか?
明治31(1898)年に奉納された立派な幔幕も見どころだ。落款は「東京下各?之?國住 応需 喜笑軒周宗筆(方印)」。詳細不明。以上の幔幕の写真は2019年のもの。2020年は位置が変わっていた。
(2020年の様子)
・絵馬市
絵馬市がメインだが他にもダルマ屋や鍛冶屋、軽食の露店がたくさんでていて賑やかだ。
小絵馬は台の上にけっこう乱雑に積み上げられている。形はやや横長の方形で、黒く塗った薄い木片を上の辺では左右に、左右の辺は下に飛び出るように額縁のように、おそらく接着剤で貼っている。同一の図柄でもすべて手描きで、余白には必ず「武州上岡観音」の判が捺されている。
絵柄は大別して馬と牛の二種類あり、わずかに豚の絵馬もあった。馬の色は明るい茶、こげ茶、白のほかファンシーなピンク(!)も近年描くようになったそうだ。牛の色は黒か白黒の斑紋(ホルスタイン種)のみ。豚の色は薄いピンクや黒があるらしい。馬は鮮やかな馬具を身につけた姿で描かれるが牛は鞍などはなく口取り縄程度が簡素に描かれる。また空の表現なのか、牛や豚の上方には朱や黄色の横線が描かれている。かつてはトラクターの絵馬などもあったらしい。
以前は農耕馬のお守りであったのが近年では畜牛や乗馬クラブの馬のお守りとして買い求める人が多いとも聞いた。馬を飼っている方が、ご自分の馬と同じ毛色で描かれた絵馬を買う様子を見かけた。
絵馬講の方々は紺の揃いの法被を着ていてかっこいい。
ちなみに上記の写真は2020年のものだ。
・そのほかの境内施設
馬頭観音の左手に建つ神馬舎にも絵馬が掛かっていた。
馬の銅像が建っている。背中に御幣があるのでご神馬なのだろう。彫塑は小倉右一郎(1881~1962)による。小倉は香川県生まれの彫刻家。東京美術学校卒業後、文展で発表しフランスへ留学、ロダンに師事。戦後は郷里で高松工芸高校校長や美術展の審査員を務めた。
(参考:コトバンク 小倉右一郎 https://kotobank.jp/word/%E5%B0%8F%E5%80%89%20%E5%8F%B3%E4%B8%80%E9%83%8E-1641410)
鋳造は岡本謙三。
(鍛冶屋の露店)
境内にはいくつも碑が建ち、その傍らで露店が開かれている。
(馬場もある)
(手水舎、馬頭観音の手前右手にある)
(馬頭観音の由来が描かれた看板。お堂の向かって右手にある)
・参拝の様子
以上の写真は2019年の2月19日11~12時ころ、馬頭観音堂の左手奥にある本堂に、背中に御幣を立てた白馬ほか数頭がお参りする様子を撮ったものだ。掛け軸の尊像は馬頭観音だろう。
こちらは2020年、乗馬クラブの馬たちだろうか、列をなして馬頭観音堂にお参りしている様子だ。
・まとめ
全国的にも珍しい絵馬市はその形を少しずつ変えながら今日も馬や牛に関わる人々の信仰を集めていた。邪魔にならないようにしてまた訪れたい。
・(追記)2021年の様子
一部、感染症対策で参拝の制限はありましたがほぼ例年通り絵馬市が開かれました。
だるまや食べ物など様々な露店が出ています。
馬が続々と参拝に訪れています。
絵馬講の看板。
手の消毒液や手袋が準備され、お金はトレーを介してやり取りしていました。対策はばっちりでした。
丑年だったので畜牛の絵馬とは少し違う絵柄の丑の絵馬やトラクター(!)の絵馬もあったようです。
絵馬の隣の笹売り場の幕も生き生きと馬が描かれていて立派でした。
いろんな露店。
お堂の横には馬場と馬小屋があります。
境内にはたくさんの石碑があります。
近くの歩道橋の上から。
馬が帰っていきます。
◯慈雲山妙安寺(上岡観音)・・・埼玉県東松山市大字岡1729